制度の資料を読み込みすぎて、夢の中でも単位数を数えていたちゃんさとです。
♯羊じゃなくて単位を数える男
♯重症です。
さて。
本日は「相談支援の機能強化型・完全ガイド」ってテーマです。
これから相談支援を始めようとしている方。
そして「機能強化型、うちも取れたらなあ…」と思いながら、日々の業務に追われて後回しになっている方。
今日はそんな方に向けて、対人援助19年目(相談支援専門員としては15年目)の僕が、機能強化型をまるっと解説します。
仕組み、単位数、要件、そして1人事業所の切り札になる「共同型(協働体制)」まで。
長めの記事ですが、これ1本で全体像がつかめるように書きました。
結論から言います。
機能強化型は、一部のすごい事業所だけのものじゃありません。段階を踏めば届く「設計」になっています。
そもそも機能強化型って何??

正式には「機能強化型サービス利用支援費」って言います。
かんたんに言うと、手厚い体制を組んでいる相談支援事業所は、基本報酬そのものが高くなるという仕組みです。
ここ、意外と誤解が多いんですよ。
機能強化型は「加算」じゃないんです。
おまけの上乗せじゃなくて、1件1件の基本報酬が、まるごと高い区分に変わる。
だから件数が積み上がるほど、じわじわ効いてくるんですよね。
ちなみに歴史の話をすると、昔は「特定事業所加算」という加算でした。
それが令和3年度の報酬改定で、基本報酬に組み込まれて生まれ変わったのが機能強化型でございます。
区分はⅠ〜Ⅳの4段階。Ⅰが一番手厚くて、Ⅳが入口です。
いくら違うのか
一番気になるところですよね。お金の話をします。
令和6年度改定後の単位数がこちら(1単位=おおむね10円です)。
【計画作成のとき(サービス利用支援費)】
- 機能強化型Ⅰ:2,014単位
- 機能強化型Ⅱ:1,914単位
- 機能強化型Ⅲ:1,822単位
- 機能強化型Ⅳ:1,672単位
- ふつうの基本報酬:1,572単位
【モニタリングのとき(継続サービス利用支援費)】
- 機能強化型Ⅰ:1,761単位
- 機能強化型Ⅱ:1,661単位
- 機能強化型Ⅲ:1,558単位
- 機能強化型Ⅳ:1,408単位
- ふつうの基本報酬:1,308単位
数字が並ぶと目が滑るので、ざっくり言い換えます。
モニタリング1件で比べると、ふつうの報酬と機能強化型Ⅲの差は250単位。
つまり1件あたり約2,500円の差です。
月30件動く事業所なら、月に約7万5千円。
年間で約90万円変わってくる計算です。
Ⅰまでいくと、その差は年間150万円を超えてきます。
これ、パートさん1人分のお給料が出せる金額なんですよ。
体制を厚くする→報酬が上がる→その報酬で人を雇える→さらに体制が安定する。
機能強化型って、この良い循環を作るための仕組みなんです。

要件を日本語に訳します

「でも要件が難しいんでしょ…」って声が聞こえてきそうです。
大丈夫です。ひとつずつ日本語に訳していきます。
まず、Ⅰ〜Ⅳぜんぶに共通する要件が5つ。
- 週1回くらい、利用者さんの情報共有ミーティングをやる
- 新しく入った相談支援専門員には、先輩(現任研修修了者)が同行研修をする
- 基幹相談支援センターから困難ケースを頼まれたら受ける
- 基幹相談支援センターなどの事例検討会に参加する
- 相談支援専門員1人あたりの担当が月40件未満
…どうですか??
半分くらい、もうやってませんか??
週1のミーティングも、困難ケースも、事例検討会も。
ちゃんとやっている事業所ほど「言われなくてもやってること」なんですよ。
機能強化型は、それを体制として明文化して、届け出て、報酬に変える仕組みです。
そして区分を分けるのが、人員配置です。
- Ⅳ:専従の相談支援専門員2名以上。うち1名が常勤で、現任研修を修了していること
- Ⅲ:常勤かつ専従の相談支援専門員2名以上。うち1名以上が現任研修修了者
- Ⅱ:常勤専従3名以上(うち現任修了者1名以上)
- Ⅰ:常勤専従4名以上(うち現任修了者1名以上)
さらにⅠとⅡだけ、24時間の連絡体制が必要です(携帯電話の当番制でOK)。
それから令和6年度から、Ⅰ〜Ⅲには「協議会に定期的に参画すること」「基幹相談支援センターの体制強化の取組に参画すること」が加わりました。
地域とつながっている事業所を、ちゃんと評価しますよってことですね。
ちなみに令和6年度からは、機能強化型の事業所なら、常勤専従の社会福祉士・精神保健福祉士を「相談支援員」として配置して、計画案づくりやモニタリングを担ってもらうこともできるようになりました。
相談支援専門員の資格を持つ人が採れなくても、体制を組む道が広がったんです。
要チェックです。
8割の事業所が取れていない現実
ここで、国の調査データを紹介します。
機能強化型を届け出ている事業所は、Ⅰ〜Ⅳぜんぶ合わせて約2割。
残りの8割は、ふつうの基本報酬のままです。
さらに調査では、機能強化型でない事業所のうち27.3%が「届出したいけど、具体的な準備はしていない」と答えています。
…もったいなくないですか??
背景には、相談支援業界の構造的な事情があります。
常勤専従の相談支援専門員が「1人だけ」の事業所が36%。
「配置なし」を合わせると、約8割の事業所が常勤専従1人以下なんです。
1人で40件近く抱えて、計画を書いて、モニタリングに走って、電話が鳴って。

「体制を厚くしたいのは山々だけど、その前に今日が回らない」
これが現場のリアルだと思います。
僕もこの仕事を19年(相談支援としては15年)やってきたので、痛いほど分かります。
「相談支援は稼げない」ってことが古から石板に刻まれていたのかってくらい、法人内ではとりあえず感が否めなくて。僕が以前に属していた法人でも、他の業務と兼務か、一人職場が当たり前だったんですね。
一人で抱えて、誰にも言えない。でも待ったなしでの書類作成と緊急対応。
体制を厚くしたいって思っているけど、余裕が全くない状態だったんですね。
でもね、だからこそ言いたいんです。
この状況、運営費の問題を運営費で解決できる数少ない手段が、機能強化型なんですよ。
実際、国の調査でも事業所の課題の1位は「人材確保」(59.8%)、2位は「運営費の確保」(53.4%)でした。
人を増やすにはお金がいる。お金を増やすには体制がいる。
このニワトリタマゴを崩す最初の一歩が、機能強化型の設計に埋め込まれています。
そして「うちは1人だから無理」という方にこそ知ってほしいのが、次の共同型です。
共同型という切り札
ここ、今日いちばん声を大にして言いたいところです。

複数の相談支援事業所が協定を結んで、合同で機能強化型を算定できる仕組みがあるんです。
正式には「複数事業所の協働による体制の確保」って言います。
令和3年度の改定で作られた仕組みなんですが…国の調査では、機能強化型の事業所のうち、これを使っているのはわずか8%。
知られてなさすぎるんですよ。
仕組みはこうです。
たとえば、常勤専従1名ずつの小さな事業所が4つ集まるとします。
1つずつでは、機能強化型Ⅲにも届きません。
でも4事業所で協働体制を組めば、合わせて常勤専従4名。Ⅰの体制として認められるんです。
♯足し算でいいの??って僕も最初思いました
もちろん、ただ集まればいいわけじゃありません。共同型ならではの要件を、日本語に訳すとこうなります。
- 各事業所に、常勤専従の相談支援専門員が1名以上いること
- 少なくとも1つの事業所に、現任研修修了者がいること
- 事業所間で協定書(契約書のようなもの)を交わして、一体的に運営すること
- 原則全職員が参加するケース共有会議・事例検討会を、月2回以上合同で開くこと
- 要件を満たせているか、事業所間で月1回確認すること
- 参加する事業所が、地域生活支援拠点等として位置づけられていること、または地域生活支援拠点等との連携体制を確保し、協議会に定期的に参画していること
このほかに、単独の場合と同じ共通要件(週1回ほどの情報共有会議・同行研修・困難ケース対応など)も満たす必要があります。
それから、共同型で取れるのはⅠ〜Ⅲまで。Ⅳは単独専用です。
「地域生活支援拠点等??」となった方のために一言だけ。
障害のある方の緊急時の対応や地域生活への移行を支えるために、市町村が整備する地域の支援ネットワークのことです。
つまり共同型は「仲良しの事業所で集まればOK」ではなくて、市町村の地域づくりに正式に組み込まれた事業所同士が組む仕組みなんですね。
だからこそ、最初の一歩は近隣の事業所への声かけと、市町村への相談です。
拠点等に位置づけてもらう手順も、協定書のひな形も、市町村が持っています(拠点まわりの細かい取り扱いは自治体で差があるので、必ず確認を)。
そして令和6年度の改定で、共同型はさらに使いやすくなりました。
- 圏域(通常の実施地域)を越えた事業所同士の協働もOKに
- 自分の事業所に現任修了者などを置けなくても、他の事業所の主任相談支援専門員から定期的な指導・助言を受ける体制で要件を満たせる特例ができた(人材確保が特に難しい地域で、市町村が都道府県と調整して認めた場合)
つまり国は「小さい事業所は、地域の拠点としてつながって機能強化型を取ってね」と、はっきり道を作っているんです。
で、僕はこの共同型、報酬のためだけの仕組みじゃないと思っていて。
週1回、他の事業所の相談支援専門員と顔を合わせて、利用者さんのことを話す。
月2回、事例を持ち寄って検討する。
これって、1人職場の孤独の処方箋でもあるんですよね。
1人で抱えて、誰にも相談できなくて、判断が偏っていく怖さ。
対人援助職なら、みんな覚えがあるんじゃないでしょうか。
共同型は「報酬が上がって、相談相手もできる」一石二鳥の仕組みだと僕は思っています。
近隣の事業所に、声をかけてみませんか。
「協働体制、組みませんか」って。
単独と共同型のちがい早見
ここまでの話を、ぎゅっと並べておきます。
体制の作り方
- 単独:自分の事業所の中で常勤専従をそろえる
- 共同型:複数事業所の合算でOK(各事業所に常勤専従1名以上、現任修了者はどこか1か所で可)
取れる区分
- 単独:Ⅰ〜Ⅳ
- 共同型:Ⅰ〜Ⅲのみ(もらえる単位数はどちらも同じ)
会議・事例検討
- 単独:週1回ほどの情報共有会議+基幹相談支援センター等の事例検討会に「参加」
- 共同型:それに加えて、原則全職員参加のケース共有会議・事例検討会を月2回以上「共同開催」+月1回お互いに要件チェック
地域生活支援拠点等
- 単独:不要
- 共同型:必要(市町村の位置づけ+運営規程に明記)
24時間連絡体制(Ⅰ・Ⅱのみ)
- 単独:自分の事業所で確保
- 共同型:参加事業所全体の当番制でOK
ひとことで言うと——単独の事例検討は「地域の勉強会に通う」、共同型は「自分たちで勉強会を主催する」。
合算を認めてもらう代わりに、本当に一体で動いている証拠を作り続けるのが共同型なんです。
選び方の目安はシンプルです。
2人目を雇える見込みがあるなら、単独ルート。
当面1人でやっていくなら、拠点等に入って共同型ルート。
ちなみに、ここまでの内容(単独で取る場合と共同型)を、チェックを付けながら使える実行用チェックリストにまとめてあります。
受け取り方は記事の最後にご案内しますね。
一歩踏み出すための3つのルート

ここまでを、動き方として整理します。
ルート①:まずⅣを目指す
Ⅳは「常勤専従4名」みたいな話じゃありません。
専従2名のうち、1名が常勤で現任研修修了者ならOK。
たとえば常勤のあなた+非常勤(専従)1名でも、射程に入るんです。
それでも計画作成で100単位、モニタリングで100単位の上乗せ。
小さく見えて、月30件なら年間30万円以上です。
ルート②:現任研修を計画的に受ける
機能強化型のカギを握るのは「現任研修修了者」の存在です。
初任者研修を終えて実務を積んだら、現任研修へ。
これは機能強化型のためだけじゃなく、資格の維持にも必要なので、どうせ受けるものです。
「いつか」じゃなく、年度初めに研修日程を押さえてしまうのがおすすめです。
ルート③:1人事業所なら共同型
さっき書いたとおりです。
1人でⅣを目指すより早く、Ⅰ〜Ⅱが視野に入ることすらあります。
まずは近隣の事業所と、指定権者への相談から。
届出までの流れ
「よし、やってみよう」となったときの、おおまかな流れも書いておきます。
- 自分の事業所が、共通要件と人員要件をどこまで満たせているか棚卸しする
- 足りないもの(現任研修、週1会議の記録、協定書など)を埋める
- 市町村(指定権者)に、体制等に関する届出を出す
- 算定開始(届出のタイミングと算定開始月のルールは自治体に確認)
ポイントは、会議や同行研修は「やった記録」を残すこと。
議事録や研修記録が、実地指導のときの証拠になります。
様式や細かい運用は自治体ごとに違うので、最終確認は必ず指定権者へ。
でも「何を聞けばいいか」がわかっているだけで、相談のハードルはぐっと下がるはずです。
これから相談支援を始める方へ
最後に、これから開設を考えている方向けの整理です。
計画相談支援の指定は市町村が出します。必要なのはざっくり3つ。
- 法人格
- 管理者(資格は不要)
- 相談支援専門員1名以上
相談支援専門員になるには、実務経験(職種により3〜10年)+初任者研修の修了が必要です。
そして開設のときに、ぜひ機能強化型を「将来の設計図」に入れておいてほしいんです。
1人で開業→近隣と共同型→2人目を迎えてⅣ→常勤2人でⅢ→…という階段が、制度側にちゃんと用意されています。
最初から「うちは基本報酬だけでいい」と決めてしまうのと、「3年後にⅢを取る」と決めて逆算するのとでは、事業計画がまったく変わってきます。
報酬をちゃんと取ることは、ガメツイことじゃありません。
事業が続くことが、利用者さんへの一番の誠実さだと僕は思っています。
事業所が疲弊してつぶれてしまったら、困るのは地域の利用者さんですから。
まとめ
- 機能強化型は加算じゃなく、基本報酬そのものが上がる仕組み
- 共通要件の半分は「ちゃんとした事業所ならもうやってること」
- 取れているのは全体の約2割。情報を知っているかどうかの差が大きい
- 1人事業所には「まずⅣ」と「共同型(協働体制)」という2つの道がある
- 共同型は、常勤専従1名ずつの事業所が集まって合算で算定できる(取れるのはⅠ〜Ⅲ。月2回以上の合同事例検討と、地域生活支援拠点等としての位置づけ、または地域生活支援拠点等との連携体制・協議会への定期的な参画が必要)
- 開設するなら、機能強化型を将来の設計図に入れて逆算する
細かい要件や単位数は自治体の資料で最終確認が必要ですが(届出様式も市町村ごとに違います)、全体像はこの記事のとおりです。
まずは自分の事業所が「共通要件のうちいくつ満たせているか」、指を折って数えてみてください。
意外と、あと一歩だったりしませんか??
実行用チェックリストをお渡しします
最後に、お知らせです。
この記事の内容を、チェックを付けながらそのまま使える「機能強化型・共同型チェックリスト」にまとめました。
- 単独で取る場合:共通要件→人員→上乗せ要件→届出準備の4ステップ
- 共同型で取る場合:相手探し→協定書に入れる7項目→届出までの6ステップ
- 議事録など「残しておく記録」のチェック欄つき
- 単位数の早見表つき
- 印刷してそのまま使えるPDF版つき
僕が毎週エッセイを届けているサブスタック(無料のメール便り)に登録してくれた方に、お礼としてお渡ししています。

報酬改定で要件が変わったら、チェックリストも更新して登録者の方にお知らせしますので、「取ろうかな」と思ったときの道具として持っておいてもらえたら嬉しいです。
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ではまたー。
naKaraからの補足|機能強化型を「取ること」だけを目的にしないために
機能強化型は、報酬を上げるためだけの仕組みではありません。
相談支援専門員同士で情報を共有したり、事例を検討したり、地域の関係機関と連携したりする体制を整えることは、支援者が一人でケースを抱え込まないためにも大切です。
特に小規模な相談支援事業所では、「人を増やしたくても余裕がない」「相談できる相手が少ない」といった課題を抱えることもあります。
だからこそ、機能強化型や共同型を検討するときには、
「要件を満たせるか」
だけではなく、
「この体制によって、支援を続けやすくなるか」
という視点も大切なのではないでしょうか。
naKaraでは、相談支援の現場で培った経験をもとに、報酬や制度、相談支援の持続的な運営、地域連携などをテーマとした支援者向け研修も行っています。
相談支援事業所・支援者向けの研修について
「機能強化型について職員みんなで整理したい」
「相談支援事業所の運営や地域連携について学びたい」
といったご相談にも対応しています。
研修内容は、事業所や地域の状況に合わせて調整できます。
詳しくは「研修のご案内」をご覧ください。
相談支援や研修について気になることがありましたら、お気軽にお問い合わせください。





