夜中に階段で「あと一段」を踏み外してガクッとなったちゃんさとです。
♯段はなかった
♯あれは何?
さて。
本日は「思い込みが強すぎると実際と違うものを見てしまう」ってテーマです。
先日起きた誰にでもありそうな話から話すと…。
階段を降りていて、あと一段あると思ったら、実は床だったことってないですか??
ボク、めちゃくちゃあるんですよ。
♯先日もガクってなった
昨日の夜も寝ぼけて、完全に「あと一段ある」と思ってそのままの勢いで足を出したら、ガクッ。
段はなかったんです。何にもぶつかっていない。
なのに、体はめちゃくちゃびっくりしていたんですよね。
これ、今日の話の全部なんです。
ボクら対人援助職の現場でも、似たようなことが起きていて。
面談に行く前に、頭の中で「今日はきっとこう言われるだろうな」って予想してしまう場面ないですか??
ボクはあります。
14、5年も相談支援専門員をやっていると、「まあ、また大丈夫って言われるだろうな」「今日はお母さんイライラしてるかもな」みたいな予想が、勝手に出てくるんですよ。
で、面談で相手の一言にムッとしてしまった。
あとで冷静になって思い返すと、相手はそこまで強く言っていなかった。淡々と話していただけだった。
なのに、ボクだけがイラッとしていた…ってこと、あるんですよね。
♯ボクだけだったらすみません
言葉は普通だったのに、「こう来るだろう」と身構えていたから、その予想にボクが反応していた。
階段のガクッと、まったく同じなんです。
ここが、今日のテーマです。
脳は受け身のカメラじゃない

今日の考え方を一言で言うと、こうです。
脳は、目や耳から入ってきたものをそのまま見ているわけじゃない。
「次はこうなるはず」と先に予想していて、予想と実際のズレだけを受け取って直している。
え??どういうこと??って話なんですけど。
脳は受け身のカメラじゃなくて、先回りする予報士なんですよね。
これを「予測する脳」とか「予測処理」って呼ぶそうです。
たとえば夜道で黒い影を見て「猫かな」って思うじゃないですか。
あれは、猫をよく見てきた経験があるから、あいまいな影を「猫」として予想で見せているんですって。
なんでそんなやり方をしているのかというと省エネのため。
脳はめちゃくちゃエネルギーを使うので、全部をゼロから見ていたら持たない。
予測どおりの部分はそのまま残して、ズレたところだけ処理する。だから早く動けるんですね。
イギリスの研究者は、これをもっと大きく言っていて、「生き物は、びっくりを減らすように生きている」んだそうです。
予測を立てるのも、体を動かすのも、全部びっくりを減らすため。
なんか、ボクらの日常そのものだなって思えてくるんですよ。
当たるからこそ怖い

でもこの仕組み、いいことばかりじゃなくて。
思い込みが強すぎると、実際と違うものを見てしまうんですって。
錯覚も聞き間違いも、脳の予測が先走った結果なんだそうです。
これを支援の話に戻すと。
「この人はこういう人」
「あの人はいつも怒っている」
これ、脳にとっては予報なんですよね。
予報が入っていると、相手が普通のトーンで話していても、脳が不満っぽく補正して受け取ってしまう。
さっきのムッとした話。
あの怒りは、相手の言葉への反応じゃなくて、「こう言われるであろう」という自分の予想への反応だったのかもしれないんです。
伝わる前提で話しているけど、相手の部屋には届いていない、伝わっていないってことはあるあるですが…。
その「聞くバージョン」なんですよ。
相手の言葉を聞いているつもりで、実はいつも自分の予報を聞いている。
対人援助職として19年やっていると、この予報の精度が上がってくるんです。
経験がある分、「たぶんこうだろうな」が当たるようになってくる。
でも…当たるからこそ怖いんですよね。
予報どおりに見えてしまって、その人が今日、違うことを言っていても気づけない。
脳は外れたときに一番学ぶ

じゃあどうするのか。
ここがこの理論の、いちばん優しいところなんですけど。
脳は、予想が外れたときに一番強く学ぶんですって。
予想どおりのことからは何も学ばない。ズレたところだけ、脳が書き換える。
そういえばAIと話しているときもそうで、ズレたところから「ここ修正して」と言ったほうが絶対にいいじゃないですか。
間違えているのに気づかず続けていると、間違えたものがどんどん出てきてしまう。
だから対人援助職で言うと、面談で「思ってたのと違う」は失敗じゃなくて、予報を更新できた瞬間なんですよね。
「あの人、今日はこう来たか」
これが起きた日は、その人の理解がひとつ深まった日だと思っていいんじゃないかなと。
だから最近ボクは、予定どおりいかなかったとき、心の中でこう言うようにしています。
「なるほど、そう来たか」
「なんでだよ」じゃなくて、「そう来たか」。
同じズレなのに、「なんでだよ」だと予報にしがみつく。「そう来たか」だと予報が更新される。
言い方ひとつで、脳の受け取り方が変わるらしいんですよ。
ガクッとなるのも一緒で、予報が外れた合図はこわいけど、世界のほうが正しくて、こっちの予報が古かっただけ。
ただそれだけなんだなって。
最後に

今日の一歩は2つです。
ひとつ目。誰かと会う前に、「いまボクは何を予想している??」と、一回だけ自分に聞いてみる。
「たぶん断られるだろうな」「たぶん怒るだろうな」「不満が出るだろうな」
言葉にするだけで、予報と本人が分かれるんです。ここがめちゃくちゃ重要。
ふたつ目。予定どおりいかなかったとき、「なんでだよ」の代わりに「なるほど、そう来たか」と言ってみる。
脳にとっては、その日いちばんの学習チャンスなので。♯収録では一番いいところで噛みました
声に出さなくていいです。心の中でいい。なんなら、面談が終わって帰り道に「あ、さっき予報どおりに聞いてたな」と気づくだけでもいい。
気づいた時点で、予報と本人はもう分かれています。
みなさんは、面談の前に、どんな予報を立てていますでしょうか。
ではまた。
参考文献・出典
- アンディ・クラーク『経験する機械 心はいかにして現実を予測し構成するか』(高橋洋訳、筑摩書房)。
「予測処理」の考え方(脳は入力をそのまま受け取るのではなく、予測とのズレだけを処理する) - カール・フリストン(ロンドン大学)の「自由エネルギー原理」。生き物は「びっくり(予測誤差)」を減らすように知覚し、行動するという理論。
K. Friston, “The free-energy principle: a unified brain theory?”, Nature Reviews Neuroscience, 2010 - アニル・セス『なぜ私は私であるのか 神経科学が解き明かした意識の謎』(岸本寛史訳、青土社)。
知覚は「制御された幻覚」であり、錯覚は予測が先走った結果だという説明
naKaraからの補足|思い込みにとらわれず、一人ひとりの声を聴くために
相談支援の現場では、これまでの関わりや経験から、相手の気持ちや考えを無意識に予測してしまうことがあります。
しかし、同じ人であっても、その日の体調や置かれている状況によって、感じ方や希望が変わることがあります。
「以前はこう話していたから、今回も同じだろう」と考えるのではなく、今、本人がどのように感じ、何を望んでいるのかを丁寧に確認することが大切です。
また、支援者の受け取り方と本人の思いに違いがあると感じたときには、すぐに判断せず、言葉の意味を確かめることも必要です。
過去の経験だけで相手を判断するのではなく、その時々の思いや変化に目を向けること。
そうした姿勢が、一人ひとりに寄り添った相談支援につながるのではないでしょうか。





