利用者さんから何かをもらった時どうしてる??

利用者からの贈り物と支援者の関わりを描いたイラスト

利用者さんのご家族から、木彫りの器に入ったドラゴンフルーツをいただきそうになったことがあります。
♯どう考えても受け取れない

さて。

本日は「利用者さんから何かをもらった時どうしてる??」ってテーマです。

訪問先でお茶やお菓子を出される場面って、ボクら対人援助職には定番じゃないですか。

「お茶くらいなら」なんて言うけど、結構なお菓子や野菜が出てくる日もある。

職場のルールでは受け取れない。でも断ると相手の顔が少し曇る。

あの瞬間の気まずさ、わかりますよね。

19年やっていても、毎回ちょっと困るんですよ。

今日はこの場面を、心理学で分解してみます。

なんで断りにくいのかも、なんでルールで禁止されているのかも両方すっきり見えてくるんです。

ここが、今日のテーマです。

目次

返報性の法則

使う道具は「返報性(へんぽうせい)の法則」です。

アメリカの心理学者チャルディーニという人が、 人が「イエス」と言ってしまう理由を研究して、『影響力の武器』という有名な本にまとめました。

その中の、いちばん強力なスイッチがこれです。

人は、何かをしてもらうと、 「お返ししなきゃ」と感じてしまう。

これ、頭で考える前に体が反応するレベルなんですよ。

スーパーの試食を食べたあとなんとなく買っちゃう。
年賀状をもらったら、出してない人にあわてて書く。
試飲をさせてもらうと少し高い方を買ってしまう。

……全部、返報性です。

面白い実験があってですね。
ニューヨークのレストランで、 お会計のときに小さなチョコを1個添えるだけで、 チップが増えたんです。

しかも、続きがあって。
同じチョコ2個でも、 最初から2個渡すより、 1個渡して、いったん帰りかけて、 「あ、もう1個どうぞ」と戻ってきたほうが、もっと増えた。

量は同じなのにです。

「わざわざ自分のために戻ってきてくれた」と感じたほうが、 お返ししたくなった。

つまり返報性は、 モノの量じゃなくて、気持ちの量に反応するんですよ。
これが今日の話の、いちばん大事な補助線です。

じゃあ、この道具で、さっきのお菓子問題を見てみます。

まず、なんで断りにくいのか。

相手のお菓子には、気持ちが乗っているからです。

そう。「いつもありがとう」の気持ち。

だから断ると、モノを断ったんじゃなくて 気持ちを断ったことになってしまう。

そりゃ、気まずいですよね。

じゃあ次。なんで事業所がルールで禁止されているのか。

「もらったら癒着になるから」ってざっくり理解している方が多いと思うんですけど、 返報性で見るともっと精密に説明できるんです。

ボクらがもしお菓子を受け取ると、ボクらの中に 「お返ししなきゃ」が自動で発生するんですよ。

自覚がなくても…です。

そうするとどうなるか。
・あの人のお願いは、断りにくくなる
・判断が、少しだけあの人寄りになる

……これ、いつかのVoicyでも話してきた 「感情で仕事の判断をしない」と同じ構造ですよね。

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受け取らないルールは、 ボクらの判断を守るための仕組みなんです。

意地悪で禁止してるんじゃない。
返報性のスイッチが押される前に 距離を取っておくという設計なんですよね。

そしてここからが、福祉の現場にとって大事な続きです。

支援を受けるって、実は「もらい続ける」ことになっているんですよね。

「いつもしてもらってばかりで申し訳ない」

面談や会議で、この言葉を聞いたことありませんか。

あれは遠慮じゃなくて、返報性の重さなんだと思うんです。

支援を断る人の中にもこれがある。

支援がいらないからじゃない。受け取ったら、返せないのが苦しいから。

だから「遠慮しないでください」と言っても、あまり効かないんですよね。

遠慮が問題なんじゃなくて、返報性の重さが問題だから。

ボクが意識している2つの工夫

じゃあどうするか。ボクが最近意識しようとしているのは2つです。

1つ目は、お返しの「出口」をこっちで用意すること。

「元気になったら、もう一回顔を見せてくれたら、それで十分です」
「今度、野菜の育て方のコツを教えてくださいよ」

お返しのハードルを相手が払える高さまで下げておく。

返せないから受け取れないのだとすれば、返せる形にすれば良い。
ここを想像する。

2つ目はお菓子を断るときは「物と気持ちを分けて」断ること。

「事業所の決まりで受け取れないんです。でも、その気持ちはめちゃくちゃ嬉しいです」

「プライベートだったら絶対受け取ってるんですけどね笑」と笑いながら言うのもいい。

物は断る。気持ちは受け取る。

これがあるだけで、あの気まずさは結構減るんですよ。

偉そうに言っていますが、ボクも先週気まずい断り方をしたばかりです。♯絶賛練習中

最後に

もし今、支援を受け取ってくれない方に関わっていたら、一度だけ見方を変えてみてほしいんです。

「遠慮している」んじゃなくて「返せないのが苦しい」のかもしれない。

だとしたら、かける言葉は「遠慮しないでください」じゃなくて…お返しがいらない形を一緒に探すことなのかもしれません。

みなさんは最近、誰かの「申し訳ない」の重さに気づけたことありますでしょうか。

ではまた。

参考文献・出典

  • ロバート・B・チャルディーニ『影響力の武器[第三版]なぜ、人は動かされるのか』(社会行動研究会 訳、誠信書房)— 返報性をはじめとする影響力の原理

この話は、Voicyでも話しています👇

naKaraからの補足|「申し訳ない」と感じる気持ちも、一緒に整理する

相談支援を利用する中で、「いつも相談に乗ってもらって申し訳ない」「こんなことまでお願いしていいのかな」と感じることがあるかもしれません。

そんなとき、無理に「遠慮しなくて大丈夫」と思おうとする必要はありません。

相談支援では、必要なサービスを紹介したり調整したりするだけではなく、「支援を受けることをどう感じているか」「どこまでなら頼りやすいか」といった気持ちも含めて、一緒に整理していくことができます。

たとえば、支援の頻度や関わり方が負担に感じるのであれば、その方法を見直したり、ご本人が無理なく利用できる形を考えたりすることも大切です。

「助けてもらったから、何か返さなければ」と考える必要はありません。

困っていることや希望を伝えていただくこと、そして一緒に考えた支援がその人の生活につながっていくこと自体が、相談支援では大切なことだとnaKaraでは考えています。

相談支援について気になることがある方へ

「こんなことを相談してもいいのかな」「まだ何を相談したいのか自分でも整理できていない」という段階でも大丈夫です。

今感じていることや生活の中で困っていることから一緒に整理し、必要に応じて利用できる福祉サービスや支援について考えていきます。

相談支援について気になることがありましたら、お気軽にnaKaraへお問い合わせください。

この記事を書いた人

ちゃんさと@精神保健福祉士/相談支援専門員

誰かの「どうしたい?」を聞いて15年。
自分の「どうしたい?」は、誰にも聞かれない。
対人援助職のための部屋を開いています(初月無料)。
障害年金・障害福祉はYouTubeで(3.7万人)。
すり減らない働き方の話→ https://chansato.substack.com

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