最低賃金が上がるけどAとBは??

最低賃金が上がると就労継続支援A型の賃金は上がり、B型の工賃は上がらないのか、疑問を抱く男性のイラスト

学生のころのアルバイトの時給、たしか650円とか700円だった気がするちゃんさとです。
♯年齢がバレる
♯45歳です。

さて。

本日は「最低賃金が上がるけどAとBは??」ってテーマです。

今年の10月1日から、最低賃金が上がっています。

全国の平均で時給1,177円。去年より56円の引き上げなんですって。

いちばん高い東京で1,280円。いちばん低い県でも1,085円。

ボクがアルバイトしていたころの、ほぼ倍です。
すごくないですか??

で、この時期になると、現場で必ず聞かれる質問があるんですよ。

A型の作業所で働いている方から、「ボクの時給も上がるんですか??」

そして同じ日に、B型の作業所に通っている方から、「ボクの工賃は上がらないんですか??」

この2つの質問、ボクは毎年ちょっと説明に詰まるんですよね。

同じ「働く」なのに、片方は上がって、片方は上がらない。

「なんで??」と聞かれたら、答えはあるんです。制度の話としては、ちゃんとある。

でも、その答えが聞いた本人を納得させるかというと…別問題なんですよ。

今日はその「答え」と「納得できなさ」の両方を書きます。

ここが、今日のテーマです。

就労継続支援について、期待する男性と戸惑う男女が会話しているイラスト
目次

先に結論から

結論です:A型は「賃金」、B型は「工賃」。この一文字の違いの正体は、雇用契約があるかどうか。

そして、上がらないのは、あなたのせいじゃない。

ここを順番にほどいていきます。

就労系のサービスは5つある

まず、就労系の障害福祉サービスは5つあります。

  • 就労継続支援A型
  • 就労継続支援B型
  • 就労移行支援
  • 就労定着支援
  • 就労選択支援

今日の主役は、上の2つ。A型とB型です。

いちばん大きな違いは、事業所と雇用契約を結ぶかどうかなんですよね。

A型、B型は労働者??

就労継続支援の作業場で、2人の利用者が部品の組み立て作業に取り組んでいるイラスト

A型は、事業所と雇用契約を結んで働きます。

つまり法律の上では「労働者」なんです。

だから最低賃金がちゃんと適用される。10月に最低賃金が上がれば、A型の時給も原則、上がります。

一方でB型は、雇用契約を結びません。

「働く」というより、「訓練や活動をして、その成果として工賃をもらう」という位置づけなんですね。

法律上の労働者ではないので、最低賃金の対象にならない。

そのかわり、自分のペースで通えるとか体調に合わせて休みながら続けられる、という良さはあります。

B型の工賃の全国平均は、月額で2万4千円ほど。

時給に直すと、数百円の世界です。

就労継続支援A型とB型の違いを比較した表。A型は雇用契約があり最低賃金が適用され、B型は原則として雇用契約がなく工賃が支払われる

同じ「就労継続支援」と呼ばれていて、同じように朝から通って、同じように手を動かしている。

でも、片方は労働者で、片方はそうじゃない。

これが「なんで??」への制度的な答えです。

…はい。説明はできました。

でも、B型に通っている方の「ボクの工賃は上がらないの??」に、この説明だけ返すのは、ボクはやっぱり気が引けるんですよ。

「あなたは労働者ではないので」と言っているのと、同じなので。
ここはしっくりこない。

 A型の「上がる」の裏側

経営負担を抱えるA型事業所と、別の就労支援事業所へ向かう利用者を描いたイラスト

じゃあA型の人は良かったね、で終わるかというと、これもそう単純じゃないんです。

最低賃金が上がるということは、事業所が払うお金が増えるということですよね。

A型の事業所は、利用者さんに払う賃金を、本来は事業所の「商売の売上」でまかなう決まりなんです。

国からの報酬は支援のためのお金であって、賃金の穴埋めには使えない。

ここ、勘違いされやすいところで。「報酬が給料に充てられているんでしょ」と思っている方もいるんですけど、違うんですね。

ところが、売上が足りなくて、報酬から賃金を出していた事業所がたくさんあった。

それで2024年の報酬改定で、国が「売上で賃金を払えていない事業所は報酬を下げます」と、基準をぐっと厳しくしたんです。

その結果、何が起きたか。

2024年、全国で300か所以上のA型事業所が閉鎖して、約5,000人の方が解雇されたんですって。

解雇された方の多くは、B型に移りました。

A型で月8万円台だった収入が、B型に移ると月1万〜2万円台になる。

(もちろん、B型でも7万円、8万円と工賃を払っている事業所はあるので、一概には言えないんですけど)

「時給が上がる」の裏側で、「職場そのものがなくなる」ことが、現実に起きたんです。

だから今年の10月も、「上がって良かった」と手放しでは言えない。

上がるたびに、経営がぎりぎりのA型は追い詰められる。

制度としては、正しい方向なんだと思います。「売上で賃金を払える、ちゃんとした働く場」を増やしたいわけなので。

でも、その移行期にいちばん揺さぶられているのは、利用者さん本人なんですよね。

あなたのせいじゃない

就労継続支援の利用者が働き方について悩み、支援員が寄り添いながら相談に応じているイラスト

ここで、B型の話に戻ります。

B型の工賃が上がらないのは、その人の働きぶりが悪いからじゃないんです。

制度の構造として、最低賃金の外に置かれている。

そしてB型の工賃は、事業所がどんな仕事を取ってこられるかで、ほぼ決まります。

多くの事業所が、企業の下請けのような作業で工賃をまかなっている。そうなると、工賃はどうしても限られてしまう。

逆に、動画編集やAIを使った仕事など、事業所の収入が上がる仕組みをどれだけ考えているかで、ずいぶん変わってくるんですよね。

つまり本人の努力よりも、事業所の「仕事の取り方」で決まる部分がめちゃくちゃ大きい。

これは、B型で働いている方にちゃんと伝えたいことで。

「工賃が低い=自分の価値が低い」ではない。

選び直す入口がある

そしてもうひとつ。

去年の10月から、「就労選択支援」という新しいサービスが始まっています。

A型がいいのか、B型がいいのか、一般就労を目指すのか。

本人の希望と力に合わせて、一緒に選び直すためのサービスです。

「なんとなくB型に来た」「A型が閉鎖したからB型になった」という方が、自分の「働く」をもう一度選び直せる入口があるんです。

(地域にまだ事業所がない、という問題はあるんですけど…ここは要チェックです)

10月の最低賃金の話は、「上がる・上がらない」で終わらせずに、「自分はどこで、どう働きたいか」を考え直すきっかけにできる。

ボクは、そう伝えたいなと思っています。

最後に

就労支援について、3つの進路を示す矢印の図を見ながら、自分に合った働き方を笑顔で相談する男女のイラスト

幸せの尺度って、どうしても相対的になりがちで。「あの人がA型に行っているから」「あの人が一般就労しているから」って、なりやすいんですよね。

でも、大事なのは「働くことで何が得られたら、自分はうれしいのか」まで一緒に考えていく。

ここがめちゃくちゃ大事。

お金で何か買いたいのかもしれないし、家族からの評価かもしれないし、思いがけないことに気づく場面があるんです。
♯偉そうに言いつつ、ボク自身の「どうしたいか」も問い直し中です

できるだけ主観的に。自分がどうしたいのかが超重要。

ではまたー。

この話は、Voicyでも話しています👇

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ちゃんさと「明日がちょっと楽になる福祉ラジオ」/ Voicy - 音声プラットフォーム このチャンネルでは、相談支援専門員・精神保健福祉士のちゃんさとが、現場のリアルと日常から明日がちょっと楽になる視点や制度の使い方をお届けします。

参考文献・出典

naKaraからの補足|A型とB型、どちらを選べばいい?相談支援の視点から

就労継続支援A型とB型には、雇用契約の有無や賃金・工賃の仕組みなどに違いがあります。

ただし、働く場所を選ぶ際に大切なのは、収入だけではありません。

例えば、次のようなことも考えてみましょう。

  • 体調や生活リズムに合わせて無理なく通えるか
  • どのくらいの時間、どんな仕事に取り組みたいか
  • 将来的に一般企業への就職を目指したいか
  • 働くことでどんな経験や達成感を得たいか

A型とB型のどちらが優れているということではなく、一人ひとりの希望や状況によって、適した働き方は異なります。

また、働き方に迷ったときには、相談支援専門員などに相談することもできます。就労選択支援の活用も含め、自分の希望や得意なこと、必要な配慮を整理しながら考えていくことが大切です。

今の働き方が合わないと感じたときも、選択肢は一つではありません。自分らしく働くための方法を、一緒に探していきましょう。

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この記事を書いた人

ちゃんさと@精神保健福祉士/相談支援専門員

誰かの「どうしたい?」を聞いて15年。
自分の「どうしたい?」は、誰にも聞かれない。
対人援助職のための部屋を開いています(初月無料)。
障害年金・障害福祉はYouTubeで(3.7万人)。
すり減らない働き方の話→ https://chansato.substack.com

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