申請することが目的か本人に届けることが目的か

「申請が目的か 本人に届けるのが目的か」という問いかけと、考える男性のイラスト

再検査でCTをすることになり健康診断が怖くなっているちゃんさとです。♯CTってどんなことするの?

さて。
今回は「申請することが目的か本人に届けることが目的か」ってテーマです。

「申請しました。で、いつから使えるんですか?」

相談支援をしていると、よく聞かれる質問です。

申請主義の日本では、申請しないとサービスは始まりません。

でも申請したあとも、認定の調査があって、審査があって、結果が出て、そこから事業所を探して契約して……。

「今、困っているんですけど」の「今」に、制度のスピードが追いつかないことがあるんですよね。

ボクら相談支援専門員は、その「待っている間」をなんとかつなぐのも仕事です。

今日は、この「待つ」が、とんでもない規模で起きていた国の話です。

ここが、今日のテーマです。

高齢女性と家族が、相談窓口で福祉サービスの申請について相談しているイラスト
目次

待っている間に、1日90人

先にひとつ、数字を書かせてください。

スペインでは、今年の1月から5月までの5か月間で、介護の支援を待っている間に亡くなった人が、1万3千人以上いたそうです。

1日に、約90人。

重たい数字です。

ボクは障害福祉の人間なので、「介護の話は関係ない」と思いがちなんですが…日本の制度は、介護の後を追いかけて決まってきたところが実際にあります。だから、ちゃんと見ておきたいと思いました。

平均320日、待っている人は26万人

高齢者や車椅子利用者、子どもなどが長い列を作り、福祉サービスを待つ時間の長さを表したイラスト

スペインには、2006年にできた、介護や支援が必要な人のための法律があります。

日本でいうと、介護保険と障害福祉の「支援が必要かを認定して、サービスを出す」部分を、ひとつにしたようなイメージです。

この法律では、申請から決定まで、本来6か月以内と決められていました。

ところが実際は、スペインの福祉の専門家たちの団体の報告によると、決定までの平均は約320日。

1年近く待つんです。

さすがに日本で1年はないと思いますが…本当は1か月で済むはずが3か月かかる、くらいのことは、よくあると感じています。♯体感です

いま待っている人は、26万人以上。

そのうち約4割は、まだ認定の審査を待っている人。約6割は、認定は出たのに、まだサービスが届いていない人。

去年1年間では、待っている間に亡くなった人が3万2千人以上いたそうです。

認定は出た。でも、間に合わなかった。

これが、20年続いた制度の、正直な現在地でした。

 20年ぶりの大改正で、何が変わったのか

相談や交流の場から人々が明るい街へ向かう様子を通じて、スペインの福祉制度改革を表現したイラスト

そして先月、9月16日。スペインの議会で、この法律の大改正が最終的に決まりました。

大臣は「今世紀最大の社会改革」と言っています。

主な変更点を5つにしぼると、こうです。

  • 決定までの期限を、6か月から3か月に(半分に)
  • 「どちらか片方だけ」だった支援を、組み合わせて使えるように(デイサービスと家での介助を一緒に、など)
  • 介護の認定を受けたら、障害の認定も自動でつく
  • 介護する人の範囲を、家族以外(近所の人や友人)にも広げる
  • 国の負担を50%と法律で決め、2026〜2027年で62億ユーロ(ざっくり1兆円規模)を上乗せ

2つめ、聞き覚えありませんか。

先日、65歳になると「介護保険が先、障害福祉は後」になる、併用のむずかしさの話を書きました。

日本も少しずつ外しにかかってはいますが、縦割りが残る。スペインは、そこを正面から外しにいったんです。

3つめも、ボクはめちゃくちゃいいなと思いました。

2回も3回も、別々の窓口で、同じことを証明しなくていい。

大臣は、こう言い切っています。

「待機リストは、2027年に半分に、2028年にはなくす」

 「待たせない」を、法律の真ん中に書いた

ボクがいちばん唸ったのは、「待たせない」を制度の目標そのものにしたところです。

制度って、つい「正しく審査すること」が目的になりがちなんですよね。

だから書類が増える。書類を整えることが、目的になってしまう。

もちろん、書類がそろっているか、要件を満たしているかは大事です。

でも本人にとっては、審査が正しいかどうかより、「今」に間に合うかどうかのほうが、ずっと大事だったりする。

申請することが目的なのか。本人に届けることが目的なのか。

カナダでは「診断書代」というお金の壁、ノルウェーでは「住む場所で受けられるかが変わる」壁の話を書きました。

スペインが取っ払おうとしているのは、「待つ時間」という壁です。

正直に言うと、この改正も、本当に期限が守られるかはこれからです。人手が足りない、地域ごとの差が大きい、という問題もかなり指摘されています。

でもボクは、「待たせない」を法律の真ん中に書いたことに、拍手したいと思っています。

なぜなら、書いたことで責任が生まれるからです。

できないなら、書かないほうが楽じゃないですか。やっています、と言っておけばいい。

でも、ちゃんと法律に書いた。やらなきゃいけない仕組みを、自分たちで作った。そこが、めちゃくちゃいいなと思いました。

 最後に

相談支援専門員と思われる男性が、男女2人の話を聞きながら支援について話し合っているイラスト

対人援助職のみなさん。

いま、申請中で「待っている」方、担当にいませんか。

その方に一度だけ、「待っている間、困っていることはないですか」と聞いてみてください。

決定が出るまでのつなぎを、一緒に考える。それも、ボクらの大事な仕事です。

当事者やご家族の方は、もし申請を待っているなら、「いつごろ結果が出ますか」と遠慮なく聞いてください。

待つ側が声を出すことも、制度を「間に合うもの」にしていく、小さな力になります。

みなさんの現場では、「待っている間」に、どんなことが起きていますか。

ではまた。

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参考:スペイン社会権省 プレスリリース(2026年9月16日)/スペイン社会サービス管理者協会 依存法監視報告(2026年6月・2025年分)

naKaraからの補足|naKaraが考える、支援を必要なときに届けるための相談支援

障害福祉サービスを利用する際には、申請や認定、サービス等利用計画の作成、事業所との調整など、さまざまな手続きが必要になる場合があります。しかし、手続きを進めることだけが相談支援の目的ではありません。

大切なのは、ご本人が今どのようなことに困っているのか、どのような生活を望んでいるのかを丁寧に確認し、必要な支援につなげていくことです。

また、申請から利用開始までに時間がかかる場合もあります。その間の不安や困りごとを一人で抱え込まないよう、利用できる相談先や支援方法を一緒に考えることも重要です。

naKaraでは、制度や手続きだけに目を向けるのではなく、ご本人の思いや生活に寄り添う相談支援を大切にしています。

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この記事を書いた人

ちゃんさと@精神保健福祉士/相談支援専門員

誰かの「どうしたい?」を聞いて15年。
自分の「どうしたい?」は、誰にも聞かれない。
対人援助職のための部屋を開いています(初月無料)。
障害年金・障害福祉はYouTubeで(3.7万人)。
すり減らない働き方の話→ https://chansato.substack.com

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